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子どもの貧困対策と安倍政権とシルバー民主主義

 2015年10月1日、政府は子どもの貧困対策の推進のため、「子どもの未来応援基金」を設立した。2013年に成立した子どもの貧困対策法案に基づき、政府は子どもの貧困対策の充実へと舵を切り、子どもの貧困対策に関する国民運動を展開するとしている。また子どもの貧困対策を考える超党派の議員連盟が設立されるなど、子どもの貧困問題に対する社会的な関心は急速に高まりつつあり、民間においても様々な提案やアプローチがなされている。  ただし、「子どもの貧困」問題の深刻さに対する理解は、まだまだ薄いと言わざるを得ず、また政府も、子どもの貧困対策に全力を傾けているとはとても思えないのが現状である。  日本若者党は、若者を大切にする政治の実現を目指すインターネット政党として、昨年に党独自の「子どもの貧困対策案」を取りまとめて以降、子どもの貧困対策の拡充を訴え続けてきた。特にわが党が強調したのは、子どもの貧困対策は、単に「かわいそうな子供を救済する」という慈善事業的な観点からみられるのではなく、子どもの貧困を放置することによって発生する社会的、経済的な損失の面から語られるべき、ということだった。詳しくは、わが党の発表した子どもの貧困対策案をご覧いただきたいが、子どもの貧困問題を放置することは、社会にとって多大なコストとなりかねない、というのが問題の本質である。したがって、子どもの貧困対策は「救貧」ではなく「経済対策」として、政府の積極的な財政出動によって解決されるべきであるはずだ。  そうした点から見て、安倍政権の子どもの貧困問題を巡る一連の対応は、子どもの貧困問題に対する理解を欠くものであり、極めて不十分であるといわざるを得ない。安倍政権下において子どもの貧困対策が少なからず前進したことは事実であり、率直に評価するが、子どもの貧困に対する正しい理解を持たず、ただ聞こえの良いことだけをやるのでは意味がない。  たとえば、冒頭に挙げた「子どもの未来応援基金」は、政府の出資によって子どもの貧困対策のための財源を確保するという性質のものではなく、企業や個人からの寄付を募り、それを貧困対策の財源とする、というものである。  先日国会で、民主党の蓮舫代表代行が暴露したように、これまでに子どもの貧困対策の「国民運動」に、政府は2億円もの国費を投入したが、現在集まった募金は2000万円にも満たない額であるという。  まず子どもの貧困対策の原資を民間からの募金に頼るという政府の発想がまったく意味不明である。なぜ国費を投入して積極的に対策を進めることができないのか。政府の姿勢一つで、子どもの貧困対策はいくらでも拡充できるはずなのに、それをせず、費用対効果の面から見ても最低といえる「募金」に頼ろうというのは、なにか深い考えがあってのことなのだろうか。安倍首相は、「きっと財界は募金に応じてくれるはず」と虚勢を張るが、その根拠はどこにもない。  一方で、安倍政権は貧しい高齢者世帯に対し、国費から一時的に3万円の現金給付を行うと表明している。選挙前の露骨なバラマキである。高齢者の票を金で買いあさり、未来を担う子供たちを貧困から救い日本経済の立て直しを図る資金は国税では出さず民間からの寄付に頼るというこの政権の姿勢は、安倍晋三氏個人や自民党という一政党の体質ということにとどまらず、今日の日本政治の不誠実な体質が如実に表れているように思われる。つまりは、目先の票に目がくらんで、高齢者を優遇する政策を採用し、そもそもの数が少ないうえ選挙に行かない若者や、選挙権を持たない子供たちのことは後回しにする、「シルバー民主主義」の厚い雲に、日本政治は完全におおわれてしまったということだ。

 この雲を払いのけ、「若者を大切にする政治」の実現を目指すためには、安倍政権の打倒はもちろんだが、それだけではなお不十分である。野党第一党の民主党は、確かに自民党よりは子育て世代に対する支援の拡充を政党の理念として掲げているようだが、それを実現するだけの実行力が備わっているかは不透明である。もちろん、だからと言って民主党を切り捨てて、若者による新しい政治勢力の立ち上げを期するべきかといえば、そのような基盤が備わっているとも思えない。本格的市民革命を一度も経験していないこの国にそのような政治風土はないだろう。そもそも、野党は国民が育てるものである。一応、野党第一党である民主党はだめだといって選択肢から早々にはずしてしまうようではいつまでも政治が変わることはない。

 凡な結論ではあるが、結局は国民が政治家を叱り続けるしかないのだろう。民主党の「生活応援」路線が大きく間違っていると言う人はそう多くはない。結局は民主党に対する信頼の問題なのだから、国民が叱って、叩いて叩いて叩いて、それでもまだ信念を持って這い上がってくるだけの胆力が民主党にあるのなら、その時こそ国民は民主党の再登板を応援しようという気持ちになるかもしれない。

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