安全保障関連法案の審議に関する声明
- 桜井悟
- 2015年7月11日
- 読了時間: 4分
1、政府与党が今国会での成立を目指す、安全保障関連法案が、15日にも衆院特別委員会にて採決される情勢である。日本若者党は、改憲を経ず、憲法解釈の変更という将来に禍根を残すかたちでの集団的自衛権の行使容認、および対米追従体制を一層強化し、我が国の真の独立に対する妨げとなりかねない今回の法案に対し、懸念を表明してきた。
2、今回の法案の主な問題点は2点ある。
まず第一に、集団的自衛権の行使を可能とするためには憲法改正が必要であり、一内閣の閣議決定による解釈変更という手法は、憲法違反の疑いを拭うことができないという点である。最終的に、法の合憲性を判断するのは最高裁であるが、仮に最高裁が当法案を合憲と判断し、法的な正当性が確保されたとしても、そういった政治手法によって傷つけられるであろう立憲政治に対する国民的不信を拭い去ることはできない。そういった将来への禍根を残さないためには憲法改正が、考えられる限り最良の手段であることは間違いないし、自民党もまた改憲を志向する政党でありながら、なぜあえて解釈改憲という手段を採るのか、はなはだ疑問である。
また、当の自民党議員自身が、今回の安保法制について理解していない、あるいは、あえて国民に対して虚偽の説明をしている疑惑もある。
たとえば、自民党がインターネット上に公開した、安保法制について国民に開設するという趣旨の動画「おしえてヒゲの隊長」のなかで、同党の佐藤正久国防部会長は、安保法制の動機について「日本にミサイルを向けている国がある」「我が国を取り巻く安全保障環境が緊迫している」としているが、日本に対しミサイルが向けられているという状況は、冷戦時代から何も変わっておらず、いったいどの時期と比較して緊迫しているのか不明確であるうえ、ミサイルを撃たれた場合に我が国が自衛的措置をとることは個別的自衛権によって説明できる。集団的自衛権の行使容認に対する説明は不明確であるといわざるを得ない。
第二に、当法案により、我が国の対米依存体質が強化されるのではないか、という懸念である。第二次世界大戦後、我が国は米国が世界で行ってきた侵略戦争に対し、一度も反対の意を明確に表明したことはない。直近の例を挙げれば、米国がイラク・フセイン政権に対し「大量破壊兵器を所持している」として攻撃を行ったイラク戦争では、ドイツ・フランス・中国・ロシアなど、世界の先進各国が米国の行動を非難したにも関わらず、小泉首相はいちはやく支持を表明した。しかも戦後、イラクが大量破壊兵器を保持していたという事実はなかったことが明らかになり、その後米英では当時の指導者、あるいは議会が「あの戦争は誤りであった」としたにもかかわらず、我が国ではいまだにイラク戦争に対する総括が行われていないどころか、安倍首相は2014年5月の国会で「大量破壊兵器がないことを証明できるチャンスがあったにも関わらず証明しなかったのはイラク」などと発言し、いまだに米国の侵略戦争を正当化している。
世界各国が批判したアメリカの侵略戦争の是非を判断できず、開戦後10年以上が経過しているいまなおその総括さえできない政府が、国際的な信義のもとで集団的自衛権の行使をする能力を持っているのか、はなはだ疑問であり、自衛隊が、米国の不当な侵略戦争のために犠牲を強いられることとなる懸念は、いまだぬぐえていない。
3、わが党は、集団的自衛権の行使を可能とし、その法整備をしてゆく上では、つぎの条件が達成されていることが前提として不可欠であると考える。
(1)憲法を改正し、自衛隊を正式な国軍と位置づけること
(2)自主防衛体制を整備し、米国と真に対等な関係に立つこと
この過程を経ず、立憲主義の破壊という重大な禍根を残す可能性のある今回の安保法案はまさしく欠陥法案であり、わが党は引き続き廃案、および上記の条件の達成のため、あらゆる勢力と連帯し全力を尽くしてゆく。
Comments